2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17065
海底地すべりは発生位置や地すべり体の形状などに多くの不確実性を含んでおり,津波リスク評価には確率論的アプローチが必要となる.本検討はマルマラ海を対象に地すべり津波ハザード評価を行うことを目的とする.具体的には,パルを対象に実施した永井ら(2022)の手法に倣い,100ケースの地すべり津波波源モデルを生成し,それらに対する解析を行った.地すべり箇所は現地で発見された痕跡位置に設定した.次に,福谷ら(2021)と同様の方法で,数値計算で得られた経験分布関数を平滑化した.結果として,海底地すべりにより6mの津波が発生した可能性のある1509年の津波は,最悪のシナリオを想定した場合,再現期間が約700年と推定された.加えて,マルマラ海の特徴的な地形条件から津波高さには空間的なばらつきが認められた.