2024 年 80 巻 17 号 論文ID: 24-17067
長い海岸線を有する我が国では,人口減少を背景に海岸防護施設の持続が今後の課題となる.本研究では,南海トラフ地震による津波被害が想定される太平洋沿岸地域の小規模な海岸低地群を対象とし,堤防の防災効率に関する俯瞰的な分析を行った.あらかじめ標高および人口メッシュデータから海岸低地のデータベースを作成し,簡易的な一括浸水計算によって堤防高さと被災人口の関係を176の小規模海岸低地について評価した.この結果をもとに,堤防長さ当たりの被災人口が全地域で同等になるよう堤防高さを設定した場合の堤防総延長・コストを分析するとともに,地域によって堤防の防護効率が異なる要因についても議論した.以上を通して,本研究では小規模な海岸低地群における堤防の効果を俯瞰的に分析する手法の枠組みを提示した.