2024 年 80 巻 20 号 論文ID: 24-20094
高速鉄道は整備コストが高く政治的判断が強く影響する.その国の人口や経済,国土,政治等を総合的に考慮して決断するが,国によって優先されている事項は異なり考え方も多様である.同じ国でも時代によって異なる.本研究では世界の高速鉄道の整備水準を時系列で評価した.分析の結果,スペインの整備水準が比較対象国で最高であり時系列的推移が独特であった.その整備経緯として,国際イベントを契機として高速鉄道整備が始まり,当初は中核都市間の路線を整備してきた.その後は高まる世論が原動力となり人口が少ない地域にも政治的イデオロギーに依らず整備を進めた路線も多い.その整備を実現できた一因にEUからの基金があった.スペインでは高速鉄道を社会的共通資本として捉え,政治的理念のもとで整備を進めたことが示唆される.