2024 年 80 巻 24 号 論文ID: 24-24009
本研究は,木曽川周辺地域である愛知県一宮市起地区および朝日地区を事例に,災害伝承が地域住民の災害意識や災害への備えに与える影響や課題について明らかにした.本研究により,伝承のみが残っている朝日地区に比べ,災害伝承に関わる自然災害伝承碑が残っている起地区の方が,災害伝承が認知されており,災害に対する意識が高くなるという有意な差がみられた.一方,自然災害伝承碑の有無に関わらず,地域住民の災害への備えは十分に実施されているとは言えなかった.災害伝承の継承方法は,学校での防災教育における地域住民の期待が高いことも示された.災害伝承は,地域の災害の歴史を知る動機付けとして有効であり,災害のメカニズムや対策と併用した活用が求められる.