2024 年 80 巻 25 号 論文ID: 24-25011
天然アユは,摂食した藻類の分解により,キュウリやスイカのような香りを発するが,養殖アユは,飼料に藻類を含まないため,この香りが少ない.本研究では,栄養塩が豊富な下水処理水で藻類を培養し,それを人工飼料に0~30%の重量割合で混合した飼料を養殖アユに給餌する試験を行った.処理水での藻類培養の結果,緑藻綱(特にChlorococcales sp.)が優占した.この培養した藻類を養殖アユに給餌した結果,キュウリやスイカの香り成分の濃度は,アユの身では藻類を給餌しても変化しなかったが,内臓では藻類を給餌した条件で高く,処理水で培養した藻類の給餌によって,これらの好ましい香りをアユに付与できた.一方で,藻類の給餌により,処理水由来のカビ臭とムスク臭成分の濃度も,アユの内臓で高まる課題が残った.