2024 年 80 巻 25 号 論文ID: 24-25046
田沢湖(秋田県)は電源開発のために玉川水系から強酸性水が導入された結果,酸性化が進行し現在は自立した生態系は機能していない.その対策として,1991年から玉川中和処理施設での中和対策が開始されているが,田沢湖のpHは5.2付近で推移しており,中和処理施設の効果も未解明である.そこで本研究では,玉川-田沢湖水系の酸性区間における玉川中和処理施設,玉川ダム,田沢湖の3地点について水生生物を用いた短期慢性毒性試験を行い,現状及びpH 6.7調整後にて比較検討を行った.その結果,玉川中和処理施設,玉川ダム,田沢湖の流下方向における毒性単位TUは低下の傾向を示し,特に玉川ダムまでのTU値の著しい減少,即ち毒性の改善が大きかった.pH調整効果については中和処理施設の処理水において顕著にみられたため,現状の中和処理対策による水生生物への毒性低減効果は不十分であった.