2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16028
本研究では西日本の5つのダム貯水池を対象に,底層がほぼ無酸素状態となる際の水中のリンの鉛直分布特性を調べた.その結果,鶴田ダム貯水池では,中層から底層にかけてPO4-Pが減少するパターンが他の貯水池よりも高頻度で出現していることが確認された.このような鉛直分布は,湖底に近づくにつれてPFeが増加することに加え,「湖底上のごく近傍で,溶出し酸化した鉄に,より多くのリンが吸着する」ことによって形成されている可能性が示された.また,同貯水池では,底泥のごく近傍を除いて,リン溶出の影響がリン濃度としてほとんど観測されないことも分かった.その主な要因として,上流から比較的高い硝酸態窒素が供給されていること,底泥に易分解性有機物が少ないことから,底層においても還元的環境が進行しにくい可能性が挙げられた.