2025 年 81 巻 16 号 論文ID: 24-16032
洪水予測においてアンサンブル気象予測の活用が進んでいるが,土砂災害予測に適用した例は少ない.本研究では,令和2年7月豪雨において九州で発生した線状降水帯を対象に,200メンバー降雨予測を用いた土壌雨量指数による土砂災害危険度予測を行った.土壌雨量指数の空間分布を可視化して,値や位置のばらつきを分類し,確認した.また土砂災害が多数発生した芦北町における,異なる5カ所の1km2の点で土壌雨量指数を計算した.結果,避難指示の発令目安に当たる警戒レベル4相当を超過したものは200メンバー中19%で,既往最大値を56%のメンバーが上回った洪水予測と比較して小さな値となった.局地的な現象である土砂災害には,確率が低い上位の値を見逃さずかつ降雨位置予測の不確実性を加味した予測が必要であると示唆された.