2025 年 81 巻 6 号 論文ID: 24-00202
本論文は,腐食ひび割れが生じた鉄筋コンクリートに対して電解質溶液の先行注入とひび割れ注入補修を前処理とした電気防食の腐食抑制効果を検討したものである.乾湿繰返しによって腐食ひび割れを生じさせたモルタル試験体に前処理を施して244日間の通電実験を行い,試験体の補修状況,腐食ひび割れの進展,鋼材の復極量および分極挙動,鋼材腐食量を調査した.前処理として濃度10%の亜硝酸カルシウム水溶液の先行注入および超微粒子セメントを用いたひび割れ注入補修を実施した試験体では,無補修かつ無通電の試験体と比較して鋼材腐食量が65%抑制された.このような腐食抑制効果が得られた要因は,亜硝酸イオンが腐食鋼材を不働態化させたこと,および亜硝酸カルシウム水溶液が鋼材周辺の導電性を向上させたことによると考えられた.