土木学会論文集
Online ISSN : 2436-6021
81 巻, 6 号
通常号(6月公開)
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構造工学,地震工学,応用力学
論文
  • 金氏 裕也
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00311
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     溶液型注入材を圧入する砂質地盤の改良またはコンクリート構造物の補修を評価するためには,地盤内部またはコンクリート内部へ移動した溶液中の溶質の移動量を予測することが必要不可欠である.本研究では,多孔質体内部への溶液圧入に起因する多孔質体中の溶質移動量を予測する解析モデルを提案した.多孔質体中の溶質移動は,溶液圧入に起因する移流および機械的分散と溶液中の溶質分子拡散が複合する現象であると定義した.間隙内部の圧力損失に起因する溶液移動の駆動力の変動を考慮した多孔質体中の溶質移動に関する支配方程式を構築し,溶液濃度を表す解析解を導出した.解析結果から,溶液濃度分布の時間変化は,溶質移動初期では溶液圧入による移流現象に依存し,時間が十分に経過した後は機械的分散現象に依存することを示した.

河川・海岸・海洋工学と水文学
論文
  • 山川 大貴, 豊田 真, 甲斐田 秀樹, 米津 和哉, 小池 雄大, 栗山 透
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 22-00366
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     沿岸部のコンクリート構造物は,津波により襲来する漂流物が衝突する場合,その影響を考慮して設計を行う必要がある.一方で,漂流する可能性のある小型船舶(FRP船舶)の衝突に対する構造物の応答評価に関する知見が少ないことが耐津波設計上の課題となっており,現状における防潮堤等の設計では二次元静的解析により評価する場合が多い.そこで,本研究ではFRP船舶を対象とし,FRP船舶の荷重-変位関係から軸剛性を設定し,ばねを介して衝突荷重を入力することで三次元動的に構造物の応答評価を行う一連の評価フローを提案した.また,本手法により得られた構造物の応答評価の結果と従来の応答評価の結果を比較することで,解析手法の違いが与える影響を確認した.

  • 福岡 龍, 福岡 捷二
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00128
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     2020年7月豪雨における内水氾濫の検証データの殆どない人吉市を対象に,高精度な内水氾濫解析(2D-IMEC)から教師データを得ることで,内水氾濫リアルタイム解析法(RIMEC)を構築した.過去の複数豪雨への適用から内水氾濫のための新たな避難基準を見出し,内水・外水氾濫の重畳災害時の安全な避難の考え方やリアルタイム内水氾濫予測への活用を示した.更に,2D-IMECとRIMECの解析結果とこれに基づく流域水収支分布図を作成し,複数豪雨や対策前後で,地先の浸水状況,浸水量や流域貯留量の変化を示すことで,地域の防災関係者等に流域治水を進める上での分かり易い考え方を提示した.

  • 間瀬 肇, 武田 将英, 由比 政年, 金 洙列, 原 知聡, 平山 克也, 安田 誠宏
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 25-00004
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究は,波の打上げ高低減係数と欧米で使われるEurOtop越波流量算定式に含まれる粗度係数,日本で使われる換算天端高係数の定義およびそれらの相互関係を明確にした後,打上げ高低減係数の変化による越波流量の低減特性を示す.続いて,合田らの越波流量推定図や消波護岸の打上げ高低減係数の実験結果を参考にし,消波護岸の越波流量算定に打上げ・越波統合算定モデル(IFORM)を使用する際の打上げ高低減係数の設定法を検討した.そして,EurOtopによる消波護岸の越波流量算定式や実験結果との比較,ならびに最近の消波護岸の越波流量実験結果と比較・検討を行ってIFORMの有用性を示し,海底勾配および天端高毎に,設置水深に対する消波護岸の越波流量変化図を作成してその変化特性を示す.

地圏工学
論文
  • 大原 勇, 仲山 貴司, 三輪 陽彦, 松丸 貴樹, 杉山 健太, 池島 傑, 井上 太郎
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00240
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     伏び管の検査の効率化に資する知見を得ることを目的とし,伏び管破損時の地表面の地盤反力係数の低減率を算定するモデルを構築し,各種実験との比較検証を行った.伏び管の破損を模擬した模型実験および実物大実験との比較では,算定モデルにより地盤反力係数の低減率を安全側に評価できることを確認した.破損を有する伏び管を対象とした地盤調査との比較では,現地の伏び管では破損等による緩みの生成後,緩みが進展し,地盤反力係数の低下が進行する可能性が示唆された.また,算定モデルをもとに,管径と深度を軸に伏び管破損時の軌道への影響度合いを簡易に評価可能なチャートを整理した.このチャートは,重点的に検査すべき伏び管の抽出等に活用できると考えられる.

土木計画学
論文
  • 矢ヶ井 那津, 田中 尚人
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 22-00339
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     国土交通省によると全国で増加している管理不全な空き家による外部不経済は,防災・防犯,衛生,景観など多岐にわたるとされている.そのため,増加する空き家を利活用して持続的な気軽に交流する場づくりを実践的に行うことは有用である.本研究では熊本県美里町で行われた空き家を利用したイベントにおいて(1)周辺住民,(2)イベント参加者,(3)イベント企画者を対象にアンケート及びインタビュー調査を行い,域内交流の効果について考察した.本研究の目的は空き家を利活用した域内交流の実態から域内交流促進の条件やその効果を明らかにすることである.研究の結果,域内交流で形成された関係性から意識変化として(1)周辺住民は「地域への関心の顕在化」,(2)イベント参加者は「地域の魅力発見」,(3)イベント企画者は「イベント継続の意思」が読み取れた.

  • 森 成諒, 石橋 澄子, 與口 彰英, 谷口 守
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00123
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     現在注目されている関係人口の拡大において,自動車や鉄道では大都市圏からアクセスがしにくい地方への関わりを考えた際,航空機の利用を無視することができない.本研究では,航空機を利用した関係人口に着目し,関わり先の特徴や活動内容,関わりを深めるために必要なことを明らかにした.その結果,1)関わり先の特徴としては,幹線路線の空港が立地している地域が多く,空港インフラの整備状況が大きく影響していること,2)関わりを深めるために必要な内容として,これまでの自発的な関係人口による関わりだけではなく,関わりやすい仕組みづくりやポイント・マイルの付与をインセンティブとした関わりも考えられること,3)関わりの継続やきっかけの障壁として,交通環境の整備や経済的負担・時間制約が挙げられること等が示された.

  • 酒井 高良, 高山 雄貴
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00167
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     本研究では,Hub and Spoke (HS)構造の創発を再現しうる需要主導型の輸送ネットワーク形成ゲームを構築し,その均衡状態の性質を明らかにする.具体的には,まず,輸送サービス利用者の選択行動が輸送ネットワークを形成する過程を集団ゲームとして定式化し,そのゲームがポテンシャル・ゲームに属することを明らかにする.続いて,このゲームに対応するポテンシャル最大化問題がMinimum Concave-cost Network Flow Problem (MCNFP)と同じ数理構造を持つ問題に変換できることを示し,MCNFPに対する大域的最適化アルゴリズムを導入する.数値実験により,ゲームの確率安定な均衡状態としてHS構造を有する輸送ネットワークが形成されることを明らかにする.

建設材料と構造
論文
  • 桜井 邦昭, 伊佐治 優, 齊藤 和秀, 大石 卓哉
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 23-00201
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     暑中コンクリートの施工性改善のため,流動性の保持成分と凝結の遅延成分から成る混和剤を開発した.そして,この混和剤を後添加したコンクリートの品質や施工性の改善効果を実験により確認した後,実工事に適用した.その結果,暑中期に長時間にわたり流動性を保持し,打重ね可能な時間を確保するには,ポリカルボン酸系化合物,オキシカルボン酸塩および糖から成る混和剤を用いるのが望ましいこと,この混和剤を用いることでコンクリート温度が35℃を超える環境下でも,20℃程度の標準的な時期と同程度の時間にわたり流動性や打重ね可能な時間を確保できること,混和剤の使用は硬化後の品質に影響しないこと等を示した.さらに,暑中期の実工事に適用し,標準的な時期と同様の打込みおよび締固め方法で,コンクリート施工が行えることを示した.

  • 原田 健二, 小磯 陽介
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00004
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     練混ぜ水として用いる高濃度NaCl水溶液がコンクリートの性能向上に及ぼす影響を実験的に検討した.実験結果より,練混ぜ水のNaCl濃度が20%以上になると,練混ぜ水が水道水のものより断熱温度上昇量および発熱速度が小さくなるだけでなく,乾燥の抑制に伴い乾燥収縮量も抑制できることが明らかになった.圧縮強度は28日強度が2割程度低下するが,屋外気中養生でも封かん養生と同程度の強度発現をすること明らかになった.数値計算の結果より,練混ぜ水としてNaCl濃度が20%以上のNaCl水溶液を用いることで乾燥および温度応力による初期ひび割れの対策として効果があることが明らかになった.そして,コンクリートの飽和度が大幅に上昇することと溶質の存在により溶存酸素量が減少することにより鋼材腐食の抑制効果が示唆された.

  • 邉木薗 慧, 大谷 俊介, 小林 雄一, 中山 一秀, 岩波 光保, 網野 貴彦
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00202
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     本論文は,腐食ひび割れが生じた鉄筋コンクリートに対して電解質溶液の先行注入とひび割れ注入補修を前処理とした電気防食の腐食抑制効果を検討したものである.乾湿繰返しによって腐食ひび割れを生じさせたモルタル試験体に前処理を施して244日間の通電実験を行い,試験体の補修状況,腐食ひび割れの進展,鋼材の復極量および分極挙動,鋼材腐食量を調査した.前処理として濃度10%の亜硝酸カルシウム水溶液の先行注入および超微粒子セメントを用いたひび割れ注入補修を実施した試験体では,無補修かつ無通電の試験体と比較して鋼材腐食量が65%抑制された.このような腐食抑制効果が得られた要因は,亜硝酸イオンが腐食鋼材を不働態化させたこと,および亜硝酸カルシウム水溶液が鋼材周辺の導電性を向上させたことによると考えられた.

  • 永塚 竜也, 前川 亮太, 前島 拓, 岩城 一郎
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00228
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     筆者らは,床版防水層のピンホールとブリスタリングの発生メカニズムを解明するため,コンクリート平板上に防水層のピンホールとブリスタリングを再現し,コンクリートの緻密性と水分量に着目した各種実験を行った.その結果,コンクリート表層のごく浅い位置に存在する気泡内の空気が防水材の熱により体積膨張し,その空気が細孔を通じて表面に排出されることでピンホールが生じることを明らかにした.

     また,外気温の上昇によりコンクリート内部の水分が外部に逸散する過程でコンクリート表面に移動し,その水分が水蒸気となり体積膨張することでブリスタリングが生じることを明らかにした.これらの現象は,表層が緻密なコンクリートよりも細孔の多いコンクリートで生じやすい傾向にあり,表層を緻密に仕上げることで現象を抑制できる可能性を示した.

環境と資源
論文
  • 山本 達生, 芳賀 直樹, 加藤 智大, 高井 敦史, 勝見 武
    2025 年81 巻6 号 論文ID: 24-00257
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル 認証あり

     ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の環境汚染対策では全分子結合を切断する無機化分解が必要とされる中,焼却処理は有望な技術といえる.しかし,従来の混焼処理はふっ化水素ガス(HF)の濃度抑制のため処理容量の低下を招いていた.本研究では,PFOS・PFOA含有水成膜泡消火剤(AFFF)フルスケール専焼炉を製作し,その能力を評価した.PFOSを33mg/kgまたはPFOAを370mg/kg含有するAFFFを約172L/hで焼却した結果,分解効率はそれぞれ>99.99979%,99.99996%を示した.また,排ガス温度を熱交換器出口で500°C以上,煙突で100°C程度とする管理でHFガスによる設備損傷とダイオキシン類の生成が効果的に抑制されることを確認した.

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