2018 年 74 巻 2 号 p. 119-138
従来コンクリートの化学膨張によるひび割れ問題に対しては初期ひずみ法が一般的であった.この方法の適用に問題を認めつつも代わりの方法が提案されていないためである.辻博士の仕事量一定則はこの種の問題に適合することは知られているが一般的理論は提示されていない.本論文は仕事量一定則の理論的な瑕疵を修正した総エネルギー一定則を提唱しそれに基づき化学膨張現象に対する統一的解析手法を提案する.ASRや膨張コンクリートに関する既往の実験に対して検討した結果総エネルギー一定則は初期ひずみ法に比べ良好な解を与えることが示された.本手法はMgOによる損傷を合理的に説明できることも示された.最後にコンクリートの化学膨張による損傷などを基準などで統一的に取り扱うための指標として化学膨張エネルギーデータの集積を提案した.