2019 年 75 巻 4 号 p. 265-278
複数の穿孔を有するせん断補強筋の無い鉄筋コンクリートはりのせん断耐荷機構を解明することを目的として,静的載荷実験および有限要素解析を行った.実験の結果,穿孔をスプライン曲線上に配置したはりでは,無穿孔試験体と比較して,耐力が190%以上に増加することを確認した.鉄筋のひずみ分布からビーム機構およびアーチ機構の荷重寄与分を算出した結果,穿孔を曲線上に配置したはりでは,ビーム機構寄与分の最大値が増加するとともに,アーチ機構の卓越により終局耐力が増加することを確認した.有限要素解析により,穿孔を曲線上に配置したはりでは,鉛直応力卓越領域および鉛直応力非卓越領域の境界部に存在する単一の穿孔がひび割れ経路の変化に寄与することで最小主応力が広範囲に分布した結果,アーチ機構が卓越することを明らかにした.