抄録
平成11年の海岸法改正により,防護・環境・利用の調和の取れた総合的な海岸管理を目的とした海岸保全事業の実施が求められている.有明海東部に位置する玉名横島海岸においても,従来の押さえ盛石に傾斜を付け,突堤を配置することで漂砂が堆積しやすい構造にすることで,生物の生息場を創成する環境配慮型の海岸保全事業が行われている.しかしながら,当該海岸保全事業のような環境配慮において,成功度合を図るための明確な基準がないため,今後どのような維持管理を行うべきか等の方針が定められないのが実状である.そこで本研究では,玉名横島海岸保全事業において順応的管理の考え方を基に,HEP(Habitat Evaluation Procedure)による環境配慮の成功度合を評価するための基準の設定と,今後の管理のあり方について検討した結果を報告する.防護・環境・利用に関する個別目標を設定することで,目標に応じた効果的なモニタリング項目の設定や,堤防前面における堆砂の標高や底質性状を評価対象生物のハビタットとして維持するための管理メニューの設定が明確となった.