抄録
本研究では,東海・東南海・南海三連動型巨大地震としてM9.0の地震規模を仮定し,太平洋沿岸と日本三大湾を対象に津波浸水予測を実施した.陸上地形による津波浸水特性に加え,地震規模の違いが及ぼす浸水特性について考究した.その結果,太平洋沿岸の一部の地域では,地震規模の増大に伴い,浸水深が増えるものの,浸水範囲はあまり変化しないことが判明した.また,日本三大湾では,構造物が全壊した場合,沿岸部に広がる海抜ゼロメートル地帯を中心に浸水が拡大することを明示した.一方,構造物が完全に機能した場合では,浸水範囲がわずかであることから,同地域では,ハード対策が重要であることを示した.さらに,歴史津波の浸水被害と浸水予測の比較から,M9クラスの三連動型地震津波を対象に議論することの重要性を示した.