2013 年 69 巻 2 号 p. I_19-I_24
富栄養化が極めて進行した状態であった蓮沼海浜公園ボート池(千葉県山武市)を対象として,東日本大震災に伴う津波が生態系構造にいかなる影響を及ぼしたかについて検討した.蓮沼海浜公園ボート池は,リン過多の富栄養状態にあり,藍藻類によるアオコが毎年のように発生していた.住民からの不安や苦情もあり,2004年,2009年,2010年にボート池の底泥の天日干しによる好気化処理が施されたが,アオコの抑制効果は一時的なものに過ぎず,2009年のシオグサの大繁茂や2010年には再びアオコが発生するようになった.2011年3月の津波による海水の流入により,ボート池の水質は大幅に変化し,同時に絶滅危惧種であるカワツルモの大繁茂など生態系構造も大きく変化し,水質も富栄養化状態から改善され,生物多様性も豊かになった.