抄録
西表島網取湾ウダラ川汽水域において,潮汐に伴う塩分,水温,濁度,および優占魚類3種(リボンスズメダイNeopomacentrus taeniurus,アマミイシモチFibramia amboinensis,およびオオクチユゴイKuhlia rupestris)の分布の変化を調べた.汽水種のリボンスズメダイは,満潮時には塩分26-34‰となる汽水域下流と中流の様々な水深に分布したが,干潮時には塩分29‰となる底層(水深50cm以下)に分布した.一方,汽水種のアマミイシモチおよび降河回遊種のオオクチユゴイの分布は,潮汐に伴って変化せず,アマミイシモチは塩分が19-32‰の範囲で変動する中流に,オオクチユゴイは塩分が常に3‰以下の上流にそれぞれ分布した.これにより,熱帯汽水域では好適な塩分環境を適時選択する種や,ある範囲の塩分耐性を持つことで狭い範囲に生息する種など,環境変化に対する応答が魚種間で異なることが明らかになった.