抄録
侵略的な外来生物であるムラサキイガイは,港湾構造物表面に密生し,多量の糞を排泄することによって底生環境の富栄養化を増長する.しかし,本種の糞による底生環境への影響は,未だに定量評価できていない.本研究は,ムラサキイガイの糞の形態的特徴を用いて沈降物の中から本種の糞を判別する手法を開発することを目的とする.東京湾で採集した様々な成長段階の個体の排泄した60個の糞の形態を顕微鏡で観察した結果,「形が細長」,「幅が均一」,「形が扁平」,「縦筋がある」の4種の形態的特徴は,全体の86.7%の糞が共通してすべて保有していた.これらの特徴に基づき,沈降物中に含まれる本種の糞の正確な抽出が期待される.