抄録
人型ロボットの運動制御研究において,設計した制御器が外乱に満ちた世界で具体的にどのような動作を創出し得るのか明らかにするためには,理論的考察だけでは不十分である一方で,多数の成功例を以て統計的に有効性を主張するのも不適切である.許容される摂動を見極めるために,注意深く設定した個別事例(N = 1)を積み重ねることが肝要である.そして人の運動制御研究において,外乱下で振舞を統制する原理を理解するためには,被験者を増やして統計に頼るよりも個々の被験者(N = 1)の摂動に対する応答を明確にすることの方が重要な意味を持つ.これらは異なるようで同じことを言っている.このことを,筆者自身が研究を通して得た経験を踏まえて述べる.