抄録
海域の海表面流速には,様々な時間スケールをもつ吹送流,潮汐流,残差流および津波流速などが含まれている.本研究では,伊勢湾における海洋レーダによって観測された1時間毎の流速データを用いて,流れ成分の分離法の開発を行っている.用いられたモデルは,トレンド成分を考慮した多成分ARモデルで,周期成分,定常AR成分およびノイズ成分が含まれている.
トレンド成分として抽出された成分は,残差流成分を含んだ吹送流成分が抽出され,12時間周期成分にはS2潮およびK2潮成分が分離された.定常AR成分は,数時間から20数時間の変動時間を有する成分が抽出され,潮流の大きいところではその時間スケールの潮汐成分が抽出された.ノイズ成分には,1~2時間程度の短周期成分も含まれており,東北地方太平洋沖地震の津波成分は短周期成分として抽出された.