抄録
土砂内部の水分張力を表すサクションが砂浜の潮間帯に生息する小型底生端脚類であるナミノリソコエビの分布域を制御していることが明らかになっている.このような背景から,本研究では,ナミノリソコエビ及びその近縁種を含む3種の小型底生端脚類の生物分布とサクションの関係,又,潮汐による地下水位変動に伴うサクションの変動と生物分布の関係を明らかにすることを目的とし,3種の小型底生端脚類がそれぞれ生息し,潮差が大きく異なる新潟海岸に位置する五つの海浜,北海道の斜里海浜及び韓国済州道のサムヤン海浜で現地調査を行った.その結果,3種の小型底生端脚類の生物分布はサクションとの関係において,潮差及び潮汐の変動に関わらず,共通的な地盤環境適合場が存在することを明らかにした.