抄録
本研究では,桟橋床版における塩化物イオン浸透の非一様性に影響を及ぼす要因を検討するために,供用開始から約30年が経過した桟橋から切り出した2枚の床版を用いて,塩化物イオン濃度測定および濃度分布推定を行った.塩化物イオン濃度測定の結果,海側に位置する床版の測定値が高く,両床版における測定値の平均は大きく異なっていた.また,濃度分布推定の結果,両床版とも床版の陸側で濃度が高く,中央および海側で低い傾向が各測定深度において確認された.これらのことから,施設中における床版の位置,海象条件および床版の周囲に位置する部材の影響を受けて,床版に供給される塩化物イオン量および塩化物イオン供給分布が変化することで,床版における塩化物イオン浸透が非一様性を呈すると考えられる.