2018 年 74 巻 2 号 p. I_97-I_102
重防食鋼矢板の被覆材料として実績が多いウレタンエラストマー(TPU)の海氷接触による耐久性を調べるため,すべり摩耗試験を実施した. 金属材料と異なり,TPUの場合は砂が含まれない氷でも凝着摩耗が確認され,摩耗進行は直線的であること,その勾配で定義した損耗(摩耗)率は大きく,金属材料の腐食摩耗や海氷に混入する砂による切削摩耗「アブレシブ摩耗」の定常損耗率より1オーダー大きいこと等の基本特性のほか,接触圧,氷温,摩擦速度,そしてアブレシブ摩耗特性として海氷に混入している砂の粒径や種類が及ぼす影響も含めた損傷特性を明らかにした.さらに,氷海域で暴露試験を実施し,剥離を含むTPUの損傷が確認される等,氷海域での使用にあたっては特別に留意する必要があることが示された.