2020 年 76 巻 2 号 p. I_816-I_821
鵡川沿岸は,一級河川(鵡川,沙流川)により流域全体から底質材料と栄養塩が供給され,生息環境や生産性が良好でウバガイ等の好漁場が形成されている.本海域のウバガイは,従来調査より主に底生微細藻類を餌料としている.一方,流域全体からの濁水を含む河川出水は,一時的にウバガイ漁場の消散係数を増加させ,海底に生息する微細藻類の生長の低下が懸念される.しかし,開放的な沿岸域における底生微細藻類の知見は少ないのが現状である.
このことから本海域の底生微細藻類の生長について,室内培養試験を実施した.結果として底生微細藻類の増殖には水温依存性が見られること,水温5℃でも20℃の比生長速度の約50%と高いことがわかった.また,比生長速度についてモデル化し,本海域を対象に春季の餌場環境の変化を試算した.