2021 年 77 巻 2 号 p. I_115-I_120
津波漂流物の運動には不確実性があり,その運動は漂流物の初期状態に大きな影響を受けることが知られている.本研究では,陸上に置かれた直方体の津波漂流物を対象に,津波遡上流れに対する漂流物の初期角度θ0が,漂流物の運動に及ぼす影響を模型実験から明らかにした.流れに対して斜めな面を持つように配置された模型は流れに直交する方向にも変位するが,流出の初期に模型が回転することにより流れに対する角度が増大し,それにともなってその変位量が変化した.θ0=30°のときには初期位置から最大で16.7°の方向に移動する模型もあった.実験毎に異なる直交方向変位の標準偏差はθ0によらず流下に伴って0.04の変化率で増大した.また近接した2つの漂流物には相互作用が生じて,単体とは異なる運動を示した.