2021 年 77 巻 2 号 p. I_925-I_930
津波や高潮の浸入対策として,港口を可動式防潮堤で締切る技術が普及段階に入りつつある.本論文ではこの技術を常時に活用し,港内外の潮位差より有意な発電を行うことが可能か試算するため,可動堤の隙間で生じる局所的な急潮を小型水車に作用させる発電方式について検討を行った.1/10スケールの循環流実験の結果についても利用し,可動堤前後の水位差より港規模での発電量を導く方法を構築した.発電量には,潮汐モードや振幅,港内面積,水深,閉鎖時間,水車径・配置数,隙間幅,発電効率など多くのパラメータが関係するが,大まかに条件を仮定して発電量試算を行った.その結果,商用売電や港全体への電力供給というレベルには達しないものの,養殖設備や海水ポンプなど主要な電力を賄うことや,電動船の充電,可動堤の昇降用電源など,地産地消型の小発電システムとして活用できる可能性が示された.