2017 年 73 巻 1 号 p. 84-97
塗装された鋼構造物の腐食は,単体の塗膜欠陥から発生・進行する場合に加え,近接する複数の塗膜欠陥から発生し,それらが相互干渉しながら進行する場合がある.しかし,塗膜欠陥の寸法・近接度が鋼材の腐食挙動に及ぼす影響については不明である.本研究では基礎的研究として,単体および近接する2つの円形欠陥を有する塗装鋼板を用いて,複合サイクル腐食促進試験を行った.その結果,単体の円形欠陥から発生する腐食は,初期欠陥の径が大きいほど,その進行が促進されることを示した.また,近接する2つの欠陥から発生する腐食は,単体の場合に比して,進行性が高いことを示した.さらに,近接する2つの塗膜欠陥間の電気化学機構を明らかにするため,それらの欠陥間に流れる腐食電流の経時性を計測した.