2019 年 75 巻 2 号 p. 175-193
高張力鋼SM570を用いた鋼製橋脚では,その繰り返し塑性挙動特性の知見が不十分であることから,地震時応答が弾性域に留まるように設計されている.しかし,既設のSM570材の鋼製橋脚をコンクリート充填(CFT化)により耐震補強する場合,その優れたエネルギー吸収能を活用するとともに,CFT化による橋脚耐力の上昇に伴う地震時の基礎への負担増加を軽減するには,鋼材に適切な塑性化を許容することが必要である.そこで,近年実施されたSM570材によるCFT橋脚の塑性域での一連の載荷実験結果,および今回の材料試験で得られた詳細なSM570材の繰り返し材料特性を反映することで,CFT橋脚の塑性域での地震時終局挙動を予測するための精緻なFEモデルを提示した.本モデルでは橋脚の履歴挙動のみならず局部応力・ひずみを妥当な精度で算定できる.