土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
75 巻, 2 号
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和文論文
  • 乙部 達志, 鎌谷 研吾, 南雲 洋介
    2019 年75 巻2 号 p. 88-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     鉄道における現在の強風時列車運転規制ルールでは,風速計が規制風速に達する風を観測した場合,列車は予め定められた運転速度以下での運行や運転中止を行う.しかしながら,強風区間を低速で走行する場合には強風に曝される時間が長くなるため,必ずしも安全性が高いとはいえない可能性がある.そこで,確率的風速モデル(確率過程)を仮定した上で,列車が危険区間を通過する間に確率過程が転覆限界風速を超過する確率(転覆限界風速超過確率)を算出し,転覆限界風速超過確率を最小とする列車運転速度を決定する.確率過程を仮定し,転覆限界風速超過確率の大小を判別する指標(確率指標)を計算した所,徐行(25 km/h 以下)ではない列車運転速度で転覆限界風速超過確率が最小となった.

  • 波田 雅也, 蔵治 賢太郎, 右高 裕二, 牛島 栄
    2019 年75 巻2 号 p. 95-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     地震直後における橋梁の機能維持が課題となっている.落橋を免れても損傷が甚大で交通機能を維持できなければ,被災地への救援物資輸送といった利用ができない.筆者らは,既設橋梁の橋軸直角方向を対象として,支承部に“ダイス・ロッド式摩擦ダンパー”を設置することで,レベル1地震動に対して橋としての健全性を損なうことなく,レベル2地震動に対する耐震性の向上を図る耐震補強工法を提案している.本論文では,橋梁用に開発したダイス・ロッド式摩擦ダンパーに対して実施した静的および動的載荷実験について述べる.載荷実験の結果,最大速度 100cm/sec を超える正弦波・地震応答波載荷時においても摩擦ダンパーが概ね剛塑性型の履歴形状を有する等の性能を発揮することが確認された.

  • 中村 秀治, 森岡 宏之
    2019 年75 巻2 号 p. 111-126
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     岩盤埋設水圧鉄管の管内空虚時外水圧座屈圧力の算定においては,充填コンクリートと岩盤の剛性無限大を仮定したAmstutz式が1960年代以降用いられて来た.その後の揚水発電所の大型化,高落差化への要求に応えるため,鉄管の高強度化が進められたが,充填コンクリートと岩盤に必要な剛性の議論はなされていない.経年劣化及び外水圧変化は維持管理上の留意点であるため,本論文ではAmstutz式導出の仮定を外して,充填コンクリートを弾塑性体,岩盤を弾性体でモデル化し,鉄管とコンクリートの間隙部には接触条件を考慮して限界座屈圧力を数値解析的に検討している.Borotの外水圧座屈試験結果と解析結果の比較により解析手法を検証した後,実態に即した数値解析モデルと物性値を用いて,鉄管周囲の拘束効果が座屈圧力に及ぼす影響を明らかにしている.

  • 南 邦明, 横山 秀喜, 斉藤 雅充, 村上 貴紀
    2019 年75 巻2 号 p. 127-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     厚膜型無機ジンクリッチペイントを施した高力ボルト摩擦接合継手は,リラクセーションによるボルト軸力低下が大きく,第1著者は,設計ボルト軸力の15%増し締めでボルト施工を行えば,ボルト継手の安全性・信頼性が向上できることを示した.ただし,極厚鋼板を用いた継手および厚板化でのフィラープレート付き継手の適用性,トルシア形ボルトを使用した継手への実現性は不明であった.本研究は,これらの継手の15%増し締め施工の適用性,実現性を明確にすることを目的に行った実験的研究である.本研究では継手試験体を製作し,これらを用いてリラクセーション試験およびすべり耐力試験を実施した.そして,軸力低下の状態を明確にした上で,これらの継手の15%増し締め施工の適用性・実現性を考察した.

  • 松波 成行, 柳生 進二郎, 篠原 正, 片山 英樹, 須藤 仁, 服部 康男, 平口 博丸
    2019 年75 巻2 号 p. 141-160
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     千葉県銚子地域の一般国道 124号銚子大橋を含む市内の道路橋3橋を対象にして橋梁表面への飛来海塩量および炭素鋼標準片による腐食量を実測した.銚子周辺における飛来海塩の分布は,数値流体シミュレーションと気象再解析統計データに基づき推定し,実測値と比較することによりその適用性を確認した.腐食量解析は日本の六地点の腐食データと気象データによる教師あり機械学習から腐食速度の予測モデルを構築した.飛来海塩および腐食速度の地域差を可視化するため,得られた解析値をGIS(地理情報システム)ソフトウェア上で国土地理院の数値地図と統合し,高精細で識別性の高い 1kmメッシュ(3次地域メッシュ規格)の腐食環境地図を作成した.

  • 森 猛, 大住 圭太, 米澤 隆行, 島貫 広志
    2019 年75 巻2 号 p. 161-174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     荷重非伝達型十字すみ肉溶接継手の疲労破壊起点は溶接止端となるのが通常であるが,溶接止端に超音波衝撃処理(UIT)を施すと,止端の疲労強度が大幅に改善され,溶接ルート部が破壊起点になることがある.しかし,ルート破壊する場合の疲労き裂発生・進展性状や疲労寿命は十分に明らかとはされていない.ここでは,UITを施した荷重非伝達型十字すみ肉溶接継手の疲労試験を行い,ルート破壊する場合のき裂の発生・進展性状を示した.また,溶接部がルート破壊する場合の疲労強度評価に対する有効切欠き応力概念の適用性について,疲労き裂の開閉口挙動を考慮して検討した結果を示した.

  • 後藤 芳顯, 海老澤 健正, 佐々木 克仁, 神田 信也, 松原 拓朗, 田嶋 仁志
    2019 年75 巻2 号 p. 175-193
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     高張力鋼SM570を用いた鋼製橋脚では,その繰り返し塑性挙動特性の知見が不十分であることから,地震時応答が弾性域に留まるように設計されている.しかし,既設のSM570材の鋼製橋脚をコンクリート充填(CFT化)により耐震補強する場合,その優れたエネルギー吸収能を活用するとともに,CFT化による橋脚耐力の上昇に伴う地震時の基礎への負担増加を軽減するには,鋼材に適切な塑性化を許容することが必要である.そこで,近年実施されたSM570材によるCFT橋脚の塑性域での一連の載荷実験結果,および今回の材料試験で得られた詳細なSM570材の繰り返し材料特性を反映することで,CFT橋脚の塑性域での地震時終局挙動を予測するための精緻なFEモデルを提示した.本モデルでは橋脚の履歴挙動のみならず局部応力・ひずみを妥当な精度で算定できる.

  • 村越 潤, 森 猛, 幅 三四郎, 小野 秀一, 佐藤 歩, 高橋 実
    2019 年75 巻2 号 p. 194-205
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/20
    ジャーナル フリー

     既設鋼床版のデッキプレートとUリブとの溶接ルート部から,デッキプレート内に進展するき裂(デッキ進展き裂)の主たる原因は,比較的薄いデッキプレートの輪荷重載荷時の面外曲げであるとされており,疲労耐久性向上策として鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装による補強工法が既に多くの既設鋼床版橋に適用されている.一方,き裂が内在する場合のSFRC舗装の効果については実験例が少なく,き裂の進展抑制効果は必ずしも明らかにされているわけではない.本研究では,横リブ交差部を模擬した鋼床版試験体に様々な深さのデッキ進展き裂を導入した後に,SFRC舗装を施工して疲労試験を行うとともに,FEM解析によってき裂先端の応力拡大係数の評価を行い,SFRC舗装によるき裂の進展抑制効果を明らかにした.

  • 和仁 雅明, 佐藤 芳仁, 樋口 俊一, 佐藤 清, 久末 賢一, 恒川 和久, 今枝 靖博
    2019 年75 巻2 号 p. 206-221
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

     浜岡原子力発電所では,東北地方太平洋沖地震(2011.3.11)の津波被災を受け,発電所敷地の海側に津波防護施設「防波壁」が設置された.防波壁は,敷地の海側にある砂丘堤防と発電所施設との間に位置し,岩盤および比較的密な砂地盤中に構築された地中壁を基礎とする構造的な特徴を有する.今回,遠心載荷装置を用いた地盤-構造物連成系の模型振動実験および有限要素法による再現解析を実施し,防波壁の地震時挙動について検証した.その結果,防波壁に隣接する砂丘堤防の有無が地盤および防波壁の地震時挙動に影響を与えること,実機レベルで最大加速度2000gal程度の入力地震波で加振しても,防波壁の基礎の変形は小さく,岩盤と一体的に壁部を支持することが分かった.

  • 宮本 雅章, 小岩井 優介, 野澤 剛二郎, 小川 隆申, 藤野 陽三
    2019 年75 巻2 号 p. 222-238
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

     時速500km領域の超電導磁気浮上式鉄道では,列車走行に伴い急激な圧力変動がトンネル覆工に作用するが,バックアップブレーキである空力ブレーキを展開させた状態で走行した際の圧力変動の特性や最大値,そして,そのトンネル覆工への影響は明らかにされていない.本論文では,空力ブレーキ展開状態での列車走行に伴う圧力変動を山梨実験線での計測および,列車まわりの流れの3次元圧縮性流体解析結果から評価し,営業線のトンネル覆工に作用する最大正圧および,最大負圧を算定した.さらに,営業線トンネル覆工の応力解析を実施し,最大正圧および,最大負圧が作用した時の覆工構造の挙動を明らかにし,限界状態設計法により覆工構造の安全性を確認した.

  • 伊藤 義人, 須崎 雅人, 廣畑 幹人, 菅江 清信, 上村 隆之, 壱岐 浩
    2019 年75 巻2 号 p. 239-248
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    ジャーナル フリー

     塩化物を含む大気環境で優れた耐食性を示すSn添加鋼材を適用した鋼構造物の塗替え塗装における腐食劣化特性を明らかにすることを目的に,予め腐食試験にて腐食させた鋼板の素地と残留塩分量を調整した後,実環境曝露と腐食促進試験法を用いて塗装部耐食性を評価した.実環境の曝露試験では,Sn添加鋼材の耐食性を確認したが,濡れ時間の長い腐食促進試験法では比較鋼材と同程度の性能を示した.塗装鋼構造物の補修時における塗替え塗装の寿命判定のためには,無塗装鋼板を腐食させた後に素地調整した試験片を用いるよりも,実補修に近い旧塗膜の活膜を残した塗替え塗装仕様を用いた方がよいと考えられる.また,補修塗替え塗装の塗膜下のさび層や残留塩化物や界面の濡れ時間等を考慮した促進試験法を用いて定量的な評価をする必要があることが分かった.

和文報告
  • 若山 萌美, 中西 克佳, 加藤 真志
    2019 年75 巻2 号 p. 75-87
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/20
    ジャーナル フリー

     供用 50 年を迎えた日本で最も古い無塗装耐候性鋼橋梁(知多2号橋)を対象に,橋梁の健全度評価を目的として,腐食状態と構造性能の両面から調査および評価を実施した.その結果,本橋は高飛来塩分環境に曝されているにも関わらず,供用50年目の現在でも健全と評価できる状態であると言えた.現在でも健全と評価できる理由について,過去の調査結果を考慮の上,橋梁所在地の腐食環境特性の面から考察した.さらに,材料の腐食状態と構造性能を考慮した知多2号橋の余寿命等の推定も実施した.

  • 南 邦明, 田村 洋, 白旗 弘実, 内田 大介, 吉岡 夏樹, 濱 達矢
    2019 年75 巻2 号 p. 249-256
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
    ジャーナル フリー

     高力ボルト摩擦接合継手のすべり耐力試験において,すべりの判定は,すべった時に荷重が下がり変位が大きくなった時としている.ただし,荷重の低下がほとんどなく変位が大きくなるケースでは,近年,変位量0.2mmに達した時の荷重値をすべりと判定する場合もある.ただし,これまで摩擦面の違いによるすべり時の変位量については明確にされてこなかった.本研究は,摩擦面に応じた変位量によるすべり判断の目安値を提案することを目的に行った実験的研究である.本実験では,無機ジンクリッチペイントやブラスト等,異なる5タイプの摩擦面を有する高力ボルト継手を用いてすべり耐力試験を実施し,すべり時の変位を計測した.また,既往の研究におけるすべり時の変位量も調べた上で,摩擦面に応じた変位量によるすべり判断の目安値を提案した.

  • 南 邦明, 遠藤 輝好, 小峰 翔一, 宮井 大輔, 藤野 大地, 吉岡 夏樹, 澁谷 敦, 濱 達矢
    2019 年75 巻2 号 p. 257-265
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/20
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     高力六角ボルトは,架設現場で事前に予備試験を行い,トルク係数値を算出した上でその日のトルクを設定することにより,適切な導入軸力が期待できるボルト締付け方法である.ただし,実際,どの程度のトルク係数値が設定され,どの程度のばらつきがあるのかといった統計データはなく,これらを把握しておくことはボルト継手の安全性・信頼性を示す上で重要である.本報告は,橋梁で使用される高力六角ボルトのトルク係数値および機械的性質を把握することを目的とし,F10T(W) (M22)の現状調査を行ったものである.調査は,ボルト製品検査証明書,検査時の立会いで行われるトルク係数値確認試験および架設現場の予備試験のトルク係数値の結果も集計し,その現状を明確にした.さらに,製品検査証明書から機械的性質についても調査した.

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