2021 年 77 巻 4 号 p. I_117-I_127
2016年4月に発生した熊本地震においては,崩落した阿蘇大橋,架け替えが決定した第一白川橋梁といった上路式鋼アーチ橋が甚大なる損傷を受けた.それらの損傷を与えた主要因として,地盤変動による支承部の滑動が挙げられている.一方で,地盤変動による影響や対策は,道路橋示方書を始め,NZコードを代表とする海外の示方書にも何ら示されておらず,検証データも少ない.
そこで本研究では,アーチ支承と床版の滑動によって上路式鋼アーチ橋にどのような影響が生じるのかをFEM解析を用いて検証した.橋軸方向,橋軸直角方向,高さ方向,それらを組み合わせた複合方向に強制変位を与え,どの程度の変位がアーチリブに降伏応力が生じさせるのかを比較した.また,代表的な滑動例に対して弾塑性解析を行った結果を報告する.