抄録
鉄鋼材料をはじめとする様々な材料中での組織形成過程を予測可能な強力なシミュレーション手法としてPhase-Field法が活発に研究されている. 特に, Multi-Phase-Field(MPF)法は多結晶・多相材料中における凝固や相変態による組織形成過程を記述するシミュレーション手法として提案され, 発展している. 本研究では, GPUを用いることによりMPFシミュレーションの計算性能が向上することを示すため, CUDAを用いてMPF法のプログラムコードを新たに開発した. さらに, 数値計算およびメモリ面でコストの大きいMPF法をGPU上で計算するために, APT法を採用しメモリ使用量を低減した. 開発したプログラムコードを用いて, 2次元粒成長シミュレーションを行い, 1GPUでの基本計算性能を評価した. その結果, GPU上のシェアードメモリを有効に利用することで, 1GPUのみでCPU1コアでの計算性能に比べて約5.3倍の高速化を実現し, MPFシミュレーションの高速化手法としてGPUを用いることが有効な手法の一つであることを確認した.