2024 年 33 巻 p. 221-228
本研究の目的は、医療的ケア児の家族が経験する現状を通し、上手くいく生活を成り立たせてきたエンパワメントの構造を明らかにすることである。医療的ケア児の母親8名に半構成的面接を行い、質的帰納的研究により分析した結果、6つのシンボルマークを抽出した。その結果、母親は、命の危機に直面しながら生きる子どもの頑張りに【気付き:命の重みを痛感】するという体験を基盤に、【経験:育児の成功体験の積み重ね】、NICU退院後に医療的ケア児と家族生活を送る中で【共感:家族員への平等な視点】や、【広がり:育児の役割交代】、【学習:仲間との学び合い】へと拡大されて善循環していた。さらに、子どもの状態変化に対応しながら上手くいく生活を成り立たせるためには、長期的に挑戦し続けるという【継続:望む生活実現への持久力】が必要である構造であった。