日本臨床免疫学会会誌
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総説
結核免疫から考える生物学的製剤使用-とくに小児における留意点-
安井 耕三
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2014 年 37 巻 5 号 p. 423-429

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抄録

  いまだに世界の人口の3人にひとりは結核菌に感染披歴があり,いまだに毎年900万人前後の結核患者が発症し,さらに発症者のおおよそ2割にあたる130万人が死亡している(WHO結核レポート2013年).結核症に対する宿主免疫に必要な抵抗性は細胞性免疫(とくに獲得免疫;キラーT細胞,Th1ヘルパーT細胞)とマクロファージの機能にある.最近では結核症の感染防御機構における自然免疫系の関与が再び重要視され,関連したサイトカインや殺菌タンパク,Toll-like受容体(TLR)の役割が明らかになっている.
  一方サイトカインや細胞表面蛋白を標的とした生物学的製剤(いわゆるBio)や細胞内情報伝達阻害を狙った低分子化合物の登場は,おもにリウマチ疾患に対し治療効果とその予後に劇的な改善をもたらした.しかし成人中高年者の関節リウマチにおいてTNF阻害薬による二次性の播種性結核症の発症が報告され,またウイルス肝炎増悪などウイルスの再活性化が臨床的に問題視されている.
  日本国内においても生物学的製剤発売から既に10年が経過しており,多数の薬品販売後副作用追跡調査がまとめられてきた.この間結核の感染防御機構に関する知見も充実されている.本稿ではこれまでに明らかにされてきた結核免疫に関する新情報を提供する.これらの知見をまとめ,結核免疫に関するサイトカインの役割と生物学的製剤使用上の問題点を理解する一助としたい.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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