日本臨床免疫学会会誌
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37 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
訂正記事
  • 2014 年 37 巻 5 号 p. 389
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
    訂正:第41 回総会ポスター賞受賞記念論文
    [日本臨床免疫学会会誌2014 年Vol. 37(3). 146]
    林 幼偉
     推薦者名に誤りがございました.
    誤 第41 回総会長 山田治基
    正 編集委員長 三森経世

    [日本臨床免疫学会会誌2014 年Vol. 37(3). 154]
    瀬理 祐
    [日本臨床免疫学会会誌2014 年Vol. 37(3). 160]
    佐々木貴史
    [日本臨床免疫学会会誌2014 年Vol. 37(3). 166]
    寺尾知可史
    [日本臨床免疫学会会誌2014 年Vol. 37(3). 171]
    吉本桂子
     推薦者名に誤りがございました.
    誤 山田治基
    正 山村 隆
特集:腸内細菌と免疫疾患
  • 大谷 直子
    2014 年 37 巻 5 号 p. 390-397
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      近年,肥満は糖尿病や心筋梗塞だけでなく,様々ながんを促進することが指摘されている.しかし,その分子メカニズムの詳細は十分には明らかになっていない.今回著者らは,全身性の発癌モデルマウスを用いて,肥満により肝がんの発症が著しく増加することを見出した.興味深いことに,肥満すると,2次胆汁酸を産生する腸内細菌が増加し,体内の2次胆汁酸であるデオキシコール酸の量が増え,これにより肝臓の間質に存在する肝星細胞が「細胞老化」を起こすことが明らかになった.「細胞老化」とはもともと,細胞に強いDNA損傷が生じた際に発動される生体防御機構(不可逆的細胞増殖停止)である.しかし最近,細胞老化をおこすと細胞が死滅せず長期間生存し,細胞老化関連分泌因子(SASP因子)と呼ばれる様々な炎症性サイトカインやプロテアーゼ等を分泌することが培養細胞で示されていた.実際著者らの系でも,細胞老化を起こした肝星細胞は発がん促進作用のある炎症性サイトカイン等のSASP因子を分泌することで,周囲の肝実質細胞のがん化を促進することが明らかになった.さらに臨床サンプルを用いた解析から,同様のメカニズムがヒトの肥満に伴う肝がんの発症に関与している可能性も示された.本研究により肥満に伴う肝がんの発症メカニズムの一端が明らかになったと考えられる.今後,糞便中に含まれる2次胆汁酸産生菌の増殖を抑制することにより,肝がんの予防につながる可能性が期待される.
  • 三宅 幸子
    2014 年 37 巻 5 号 p. 398-402
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      腸管は最大の免疫組織でもあるが,常に食物の摂取などを通して外来抗原に接するうえに,100兆個にも達する腸内細菌と共存するなど独特な環境にある.近年,自然免疫研究の進歩に加え,シークエンス技術の進歩による培養によらない腸内細菌叢の網羅的遺伝子解析などが可能となり,常在細菌による免疫反応の調節に関する研究が進み,自己免疫との関係についても注目されている.無菌飼育下では多発性硬化症や関節リウマチの動物モデルは病態が軽減する.また抗生剤投与により腸内細菌を変化させると病態が変化する.特定の細菌の移入による自己免疫病態への影響については,Th17細胞を誘導するセグメント細菌を移入すると病態が悪化する一方,制御性T細胞の増殖に関与するBacteroidesやLactobacillusを移入すると病態が軽減する.これら動物モデルの解析では,腸内細菌が積極的に病態に影響することが示されている.ヒトの疾患では関節リウマチで解析がされており,特定の菌が関与する可能性も示唆されている.免疫調節に最適な腸内環境の維持が可能になれば,疾患治療のみならず予防にもつながることから,研究の進展が期待される.
  • 大野 博司
    2014 年 37 巻 5 号 p. 403-411
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      腸内フローラは,宿主腸管と複雑に相互作用することで,「腸エコシステム」と呼ばれるユニークな環境系を形成している.筆者らは,複雑な腸エコシステムを解析する方法として,ゲノム,トランスクリプトーム,メタボロームなどの異なる階層の網羅的解析法を組み合わせた,統合オミクス手法を提案している.本手法の応用により,腸内フローラが食物繊維を代謝分解して産生する短鎖脂肪酸の一種である酢酸が,腸管出血性大腸菌O157感染モデルにおいて,マウスの感染死を予防するメカニズムを解明した.また,クロストリジウム目などの細菌群が産生する酪酸が,大腸局所でナイーブT細胞に対するエピゲノム制御を介して制御性T細胞への分化を誘導することも明らかにした.酪酸のエピゲノム制御はまた,大腸のマクロファージに働いてToll様受容体の感受性を抑えることで抗炎症性の性質を付与し,腸エコシステムの恒常性維持に寄与している.この他,短鎖脂肪酸はGタンパク質共役受容体を介するシグナル伝達作用も有しており,腸内フローラによって産生された短鎖脂肪酸が吸収されて全身性に作用することで,好中球や制御性T細胞のアポトーシスや遊走を介して炎症制御に働くことも示唆されている.
  • 服部 正平
    2014 年 37 巻 5 号 p. 412-422
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      近年のDNAシークエンシング技術の革新的進歩(いわゆる,次世代シークエンサー; NGS)により,数百兆個の細菌から構成されるヒト腸内細菌叢の集合ゲノム(マイクロバイオーム)の網羅的で高速な解析が可能となった.また,細菌叢の生物学的あるいは生態学的知見を正確に得るための解析技術の開発や改良もなされ,細菌叢の包括的な研究が世界的に進められるようになった.その結果,ヒト腸内細菌叢の基本的な全体構造や機能,食事等の外的因子による影響,さらには様々な疾患における腸内細菌叢の異常(dysbiosis)等が明らかとなり,腸内細菌叢と宿主ヒトの生理現象がこれまでの想像を越えて密接な関係にあることが示唆された.一方で,サンプルの保存や搬送法,DNA抽出法,用いるシークエンサーの種類等の解析プロトコールによる影響についての詳細な精査も必要になっている.本稿では,NGSを用いたヒト腸内マイクロバイオームの解析法について解説する.
総説
  • 安井 耕三
    2014 年 37 巻 5 号 p. 423-429
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      いまだに世界の人口の3人にひとりは結核菌に感染披歴があり,いまだに毎年900万人前後の結核患者が発症し,さらに発症者のおおよそ2割にあたる130万人が死亡している(WHO結核レポート2013年).結核症に対する宿主免疫に必要な抵抗性は細胞性免疫(とくに獲得免疫;キラーT細胞,Th1ヘルパーT細胞)とマクロファージの機能にある.最近では結核症の感染防御機構における自然免疫系の関与が再び重要視され,関連したサイトカインや殺菌タンパク,Toll-like受容体(TLR)の役割が明らかになっている.
      一方サイトカインや細胞表面蛋白を標的とした生物学的製剤(いわゆるBio)や細胞内情報伝達阻害を狙った低分子化合物の登場は,おもにリウマチ疾患に対し治療効果とその予後に劇的な改善をもたらした.しかし成人中高年者の関節リウマチにおいてTNF阻害薬による二次性の播種性結核症の発症が報告され,またウイルス肝炎増悪などウイルスの再活性化が臨床的に問題視されている.
      日本国内においても生物学的製剤発売から既に10年が経過しており,多数の薬品販売後副作用追跡調査がまとめられてきた.この間結核の感染防御機構に関する知見も充実されている.本稿ではこれまでに明らかにされてきた結核免疫に関する新情報を提供する.これらの知見をまとめ,結核免疫に関するサイトカインの役割と生物学的製剤使用上の問題点を理解する一助としたい.
原著
  • 藤枝 雄一郎, 志田 玄貴, 奥 健志, 坊垣 暁之, AMENGUAL Olga, 堀田 哲也, 保田 晋助, 渥美 達也
    2014 年 37 巻 5 号 p. 430-436
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/06
    ジャーナル フリー
      抗カルジオリピン抗体(抗CL)-IgG/IgM,抗β2-グリコプロテインI(抗β2GPI)-IgG/IgMは抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断基準で認められた臨床検査であるが,本邦では抗CL-IgMや抗β2GPI-IgG/IgMはルーチン検査として確立していない.抗CL-IgG/IgM,抗β2GPI-IgG/IgM測定キット(Phadia:EliATM)を用いることによるAPSの診断における本邦での有用性を検討した.229例(APS群100例,非APS群129例)の保存血清を用い,EliATM抗CL(CL-IgG,CL-IgM)およびEliATM抗β2GPI(β2-IgG, β2-IgM)を測定した.感度,特異度,ROC曲線下面積はそれぞれ抗CL-IgG(45%,94%,0.80),抗CL-IgM(20%,94%,0.54),抗β2-IgG(33%,98%,0.88),抗β2-IgM(16%,99%,0.64)であった.APS100例で抗CL-IgG陰性55例のうち,抗CL-IgM,抗β2-IgG,抗β2-IgMのいずれかが陽性である症例は10例であった.複数の抗リン脂質抗体検査を組み合わせることで,APS診断の感度向上が確認された.
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