抄録
背景;我々はこれまで全身性エリテマトーデス(SLE)患者の末梢血T細胞におけるTCRζ鎖の蛋白発現の低下を報告してきた。
目的:カルシニューリン(CN)阻害薬であるシクロスポリンとタクロリムス治療効果に、SLE患者でのTCRζ鎖の発現変化が関与している可能性を検討する。
方法;CN阻害薬投与の前後で、末梢血単核球を採取できた26例のSLE患者を対象とし、ウェスタンブロット法で投与前後でのTCRζ鎖の蛋白発現量を、βアクチン発現量を対照として評価した。また、臨床的疾患活動性もSLEDAIなどで評価した。
結果;20例の症例にタクロリムス、6例の症例にシクロスポリンが投与された。平均年齢は44.7歳、88.5%が女性で、投与前には全患者で関節炎、発疹、血球減少、腎炎など何らかの活動性所見を認めた。これらの患者では健常人群に比較して投与開始前のTCRζ鎖の蛋白発現は著明に低下していた(45% suppression; p<0.001)。そして、カルシニューリン阻害薬投与によりTCRζ鎖の蛋白発現は改善した(p<0.01)。さらに、そのTCRζ鎖発現の回復と臨床症状の改善との間に相関を認めた。
結語;SLE患者におけるカルシニューリン阻害薬の臨床効果に、TCRζ鎖の発現低下とそれに伴うT細胞シグナル伝達異常の回復が関与している可能性が示唆された。