2024 年 8 巻 s2 号 p. s75-s78
資料へのアクセス可能性は、メタデータによって秩序化されている。その秩序をよりよく理解することが、より効率よく資料にアクセスするための条件だった。しかしこの条件は今後大きく変わる可能性がある。生成AIベースの対話型インターフェースは、資料へのアクセス可能性の根本的な原則を変容させるポテンシャルを有している。人間がデジタルアーカイブに合わせるのではなく、デジタルアーカイブが人間に合わせるようになる、というモデルがすでにリアリティを持っている。そのときには、資料へのアクセス可能性を担保するものとしてのメタデータという枠組み自体が再考を迫られる。本発表ではこのような事態を捉えるための足場として、レコード・コンティニュアム理論における「痕跡」概念を発展させることを試みる。その参照元となっている哲学者ジャック・デリダの議論に遡るとともに、ポストメタデータ時代の基本概念として「痕跡」を位置付ける。