日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
水分嚥下量と口蓋舌筋活動
―ガムシロップを用いて―
尾島 麻希舘村 卓奥野 健太郎野原 幹司
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2006 年 10 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

【目的】食塊が口腔から咽頭へ抽送される段階での口峡部の開放程度や咽頭への送り込みの調節は,抽送される食塊の量によって異なることが考えられる.口蓋舌筋は,口腔と咽頭との境界にある前口蓋弓に存在し,舌と軟口蓋の両方に付着することから,口腔から咽頭への移行段階での口峡部の開大・狭小が嚥下量によって調整されるならば,口蓋舌筋活動も嚥下量に影響されると考えられる.本研究では,嚥下時の口腔から咽頭への移行段階での口峡部の開大・狭小運動の調節機序の一端を明らかにするために,嚥下量を変化させた場合の口蓋舌筋活動について検討した.

【方法】健常成人7名を対象にした.予め検討した各被験者の至適嚥下量の1/8,1/4,1/2,1,3/2(5/4)倍量のガムシロップ(糖度8.9%)を嚥下させた場合の口蓋舌筋活動を採取した.各被験者の全作業を通じて得られた筋活動値の最大値を100%として,各筋活動値を換算して得られた% Peak EMGを筋活動値とし,嚥下量と筋活動値の関係を検討した.また,口蓋舌筋活動と軟口蓋挙上運動の時間的関係を見るため,口蓋帆挙筋活動を同時に採取し分析した.

【結果】口蓋舌筋活動の積分波形のピークの数は,同一被験者内の同一負荷量においても1個もしくは2個であり,一貫性はなかった.口蓋帆挙筋活動のピークが示される時刻を基準時とすると,ピークが1個の場合のピークの時刻とピークが2個の場合の2個目のピークの時刻は近似したことから,同様の運動によるものと考えられた.口蓋帆挙筋活動のピークとほぼ同時かやや遅れて出現する口蓋舌筋活動のピークは,口蓋帆挙筋活動に先立って出現するピークと比較して有意に大きい筋活動値を示した.本研究の結果から,口蓋舌筋活動は,嚥下過程での口腔期から咽頭期に移行する段階で生じると考えられた.至適嚥下量に基づく嚥下量と筋活動値に有意な相関を示す被験者と示さない被験者の2型があることが示された.

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© 2006 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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