摂食・嚥下障害者は,血清アルブミン濃度が障害のない人に比べ0.81g/dl 低く,栄養状態が悪いことが知られている1).この原因としては,個々の摂食・嚥下障害者に対しての栄養管理が不十分であることが示唆される.これは,経口摂取を行う場合にはどのような食品物性のものがよいのか判断が難しいことも一因と考えられる.現在,摂食・嚥下障害者のための食事基準としては,主にかたさにより評価されている2)が,食品の物性としては,かたさ以外に,まとまりやすさを示す凝集性やくっつきやすさを示す付着性も重要な因子であることはよく知られている3-5).そこで,今回の研究では,摂食・嚥下障害者に対し段階的な食事基準を有し,嚥下食に関して実績のある聖隷三方原病院で提供されている食事6,7)について物性測定を行った,今回,5段階に分かれている食事基準のうち均一な食品物性として提供されている3段階について物性を測定した,測定方法は,厚生省(現厚生労働省)の「そしゃく・嚥下困難者用食品の許可基準」に示された試験方法を参考にした.すなわち,直径20mmのプランジャーで,クリアランスを5mm,圧縮速度1mm/secで定速2回圧縮を行ない,得られたテクスチャー曲線より,かたさ,凝集性,付着性を算定した.その結果,かたさは,段階1では2~7×103N/m2,段階2では1~10×103N/m2,段階3では1.2×104N/m2以下に分布していた.凝集性については,段階1は0.2~0.5,段階2および段階3では0.2~0.7に分布していた.付着性については,段階1は2×102J/m2以下,段階2は2×102J/m3以下または凝集性が0.4付近にあれば,5×102J/m3まで分布,段階3は3×102J/m3以下または凝集性が0.4付近にあれば,8×102J/m3まで分布していることがわかった.