日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
介護老人保健施設における摂食・嚥下障害者と食の支援状況の調査
上村 智子
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2007 年 11 巻 1 号 p. 60-66

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抄録

要介護高齢者へのケアの質を高める施策ニーズを検討するために,長野県内の介護老人保健施設における摂食・嚥下障害者と食の支援状況について郵送調査した(回収率57.5%,46施設).入所と短期入所療養介護を合わせた利用者調査では,栄養管理法や食事介助の状況を調べた.施設サービス調査では,支援法の選択方法,支援内容,介護保険の請求および誤嚥事故の発生について調べた.46施設の1日あたりの総利用者3699名を調査対象とした.対象者は要支援&要介護1が11.7%(432名),要介護2&3が38.8%(1437名),要介護4&5が48.8%(1805名),その他が0.7%(25名)であった。年齢では85歳以上の人が56.0%(2071名)を占めた.経口摂取に直接介助や見守りを受ける人が全利用者の38.4%(1422名)であり,認知障害に起因する要介助者が28.0%(1037名)を占めた.経管栄養を利用する人は6.4%(238名)であった.施設サービスへの回答では,アセスメント・ツールを用いて食の支援法を選択する施設が30(65.3%)あった.食支援のケース検討会を35施設(76.1%),言語聴覚士の嚥下訓練を12施設(26.1%),歯科医師の定期往診を8施設(17.4%)が実施していた.BMIによる栄養スクリーニングを42施設(91.3%)が実施しており,栄養マネジメント加算を38施設(82.6%)が請求していた.誤嚥による過去3ケ月間の受診事例の報告が20施設(43.5%)からあった.ケアの質を高めるには,(1)認知症高齢者の食行動を支える研究を推進し,(2)アセスメント・ツールによる食の支援法決定,食支援のケース検討会,歯科医師の診療や専門職による嚥下訓練を行う施設を増やす施策が必要である.

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© 2007 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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