日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
急性期病院における摂食・嚥下リハビリテーションの有効性
松岡 真由中西 恭子渡部 啓孝
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2008 年 12 巻 2 号 p. 124-134

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抄録

【目的】当院における過去約9年間の摂食・嚥下リハビリテーションの実施状況と回復度をまとめ有効性を分析した.急性期病院における回復に導くための有効な因子を明らかにし,今後の課題を明示することを目的とし報告する.

【対象と方法】対象は491名の摂食・嚥下障害のある入院成人患者(男性303名,女性188名,平均年齢73.4歳)だった.耳鼻咽喉科医師と言語聴覚士がこれらの摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度(Dysphagia Severity Scale,以下DSS)を訓練開始時と終了時に判定し,この差をDSS回復度と定めた.DSS回復度は,患者の属性,病態構音所見,訓練実施状況から分析した.栄養摂取状況についても訓練開始時と終了時に併せて評価した.この差である栄養摂取状況回復度はDSS回復度との関係を分析した.

【結果】平均DSS回復度は1.60で,誤嚥のあるレベルは36.0%に半減した.検定結果より,性別,年齢,訓練開始時にある気管切開,および運動障害性構音障害の存在は嚥下障害の回復に関与が少ない因子だと言えた.一方,摂食・嚥下障害になった原因疾患,脳損傷部位,訓練開1三時の栄養摂取状況,誤嚥のタイプ,嚥下性肺炎既往歴認知症の存在,栄養摂取状況回復度発症から訓練開始までの日数および訓練期間は回復に関与する因子だと考えられた.

【考察】急性期病院において有効な嚥下リハを実施するためには,嚥下性肺炎の発症防止の対応,適切な嚥下評価に基づいた食餌レベルの選定等が必要だった。訓練実施については原因疾患の病態安定前後によって内容を考慮することが必要だった.入院中に適切な訓練期間を提供すること,転院先でも継続した嚥下リハが行えるように連携することが求められた.

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© 2008 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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