日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
12 巻 , 2 号
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 服部 史子, 戸原 玄, 中根 綾子, 大内 ゆかり, 後藤 志乃, 三串 伸哉, 若杉 葉子, 高島 真穂, 小城 明子, 都島 千明, ...
    2008 年 12 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    【目的】在宅および施設入居の摂食・嚥下障害者に対する訪問歯科診療で嚥下内視鏡検査(VE:Videoendoscopic evaluation of swallowing)を施行し,栄養摂取方法に関する問題点を検討した.

    【対象と方法】訪問歯科診療でVEを希望した在宅または施設入居の摂食・嚥下障害者265名 (男性139名,女性126名,平均年齢75.5歳).(1) 検査時および検査で推奨された栄養摂取方法,(2) (1)で検討した現在の栄養摂取方法と推奨される栄養摂取方法の不一致例と,誤嚥性肺炎の既往の関係,を検討した.栄養摂取方法は,経管栄養のみ,経口<経管,経口>経管,経口調整要,経口調整不要の5段階で評価した.

    【結果】(1) 検査で栄養摂取方法を上げるべきと考えられた例の多くは,経管栄養のみレベルから,経口<経管レベルへの移行が推奨された例であった.下げるべきと考えられた例の多くは,経口調整不要レベルから,水分とろみ付けなどの経口調整要レベルへの移行が推奨された例であった.(2) 栄養摂取方法を上げるべきと考えられた例のうち,経管栄養のみレベルから経口<経管レベルへの移行が推奨されたものに,肺炎の既往を多く認めた.経口調整要および不要レベルのうち,検査により経口<経管もしくは経管栄養のみレベルと評価された例にも肺炎の既往を多く認めた.

    【考察】(1) 嚥下機能検査を受けないまま,実際の嚥下機能を過小評価,または過大評価されている例が多く,摂食・嚥下機能と栄養摂取方法が乖離している現状が把握された.(2) 実際の嚥下機能ではなく,誤嚥性肺炎の既往が栄養摂取方法の選択に大きく関与していることが示唆された.

  • 若杉 葉子, 戸原 玄, 中根 綾子, 後藤 志乃, 大内 ゆかり, 三串 伸哉, 竹内 周平, 高島 真穂, 都島 千明, 千葉 由美, ...
    2008 年 12 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    現在行われている多くのスクリーニングテストは誤嚥のスクリーニングテストであり,不顕性誤嚥(SA)をスクリーニングすることは難しいとされている.今回,我々はクエン酸の吸入による咳テストを用いたSAのスクリーニングの有用性について検討を行った.

    対象は何らかの摂食・嚥下障害が疑われた18歳から100歳までの患者204名 (男性131名,女性73名,平均年齢69.90±11.70歳).超音波ネブライザより1.0重量%クエン酸生理食塩水溶液を経口より吸入させ,1分間での咳の回数を数える.5回以上であれば陰性 (正常),4回以下であれば陽性 (SA疑い)と判定し,VFもしくはVEの結果を基準とし,SAのスクリーニングの感度,特異度,有効度,陽性反応的中度,陰性反応的中度を計算した.

    咳テストによるSAのスクリーニングの結果は,感度0.87,特異度0.89,有効度0.89,陽性反応的中度0.74,陰性反応的中度0.95であった.次いで主要な原疾患別に咳テストの有用性を検討した.脳血管障害患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.76,特異度0.82,有効度0.79,陽性反応的中度0.73,陰性反応的中度0.84であった.頭頚部腫瘍患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度0.97,有効度0.98,陽性反応的中度0.93,陰性反応的中度1.00であった.神経筋疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.83,特異度0.84,有効度0.84,陽性反応的中度0.56,陰性反応的中度0.95であった.呼吸器疾患患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.67,特異度0.81,有効度0.76,陽性反応的中度0.67,陰性反応的中度0.81であった.気管切開のある患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度0.71,特異度1.00,有効度0.78,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度0.50であった.認知症患者におけるSAのスクリーニングの結果は,感度1.00,特異度1.00,有効度1.00,陽性反応的中度1.00,陰性反応的中度1.00であった.

    以上より,クエン酸吸入による咳テストはSAのスクリーニングに疾患によらず有用であると考えられた.

  • ―安全性および患者の自立度アップを目指して―
    畑 裕香, 清水 隆雄, 藤岡 誠二
    2008 年 12 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    【はじめに】口腔から咽頭への送り込みに時間を要する口腔期障害例に対し,上体を後方へ傾け食塊の咽頭への送り込みを容易にする方法が選択される場合がある.今回,我々は食物形態および摂食時姿勢の違いによって,食物の口腔通過時間に与える影響から,嚥下障害例における安全性およびADLを考慮した摂食訓練について検討した.

    【対象と方法】2005年の1年間にビデオ嚥下造影検査(VF)を行なった嚥下障害例のうち,ゼラチンゼリー,全粥,トロミ付き水を使用し,摂食時姿勢として水平からの角度①30–45度と②60–90度の両者を施行しえた29例(男性16例,女性13例,平均年齢73歳)を対象とし,食物形態と摂食時姿勢の違いによる口腔通過時間の変化を検討した.VF画像より食物が舌中央部に入った時点から食物後端が口峡を越えるまでの時間を口腔通過時間として測定した.

    【結果】口腔通過時間は摂食時姿勢が①30–45度ではゼリー4.6±4.8秒,粥8.3±8.1秒,トロミ付き水2.2±2.1秒,②60–90度ではゼリー6.9±7.0秒,粥7.0±6.6秒,トロミ付き水3.1±2.7秒であり,摂食時姿勢に関わらずトロミ付き水はゼラチンゼリー,全粥よりも短かった.全粥の咽頭への送り込みは摂食時姿勢に関わらず他の食物形態に比べて遅い傾向があった.ゼリーの送り込みについては姿勢60–90度よりも30–45度で速く,摂食時姿勢の違いにより送り込みに明らかな違いが認められた (p<0.05).

    【考察】ゼリーを用いた訓練は直接的嚥下訓練の導入期に使用することが多く,この時期は誤嚥などの危険が高いため,安全性や口腔通過時間の延長による患者の負担を考慮し姿勢は30–45度で行う方が良いと考えられる.一方,トロミ付き水や全粥を用いて訓練を行なう場合には摂食時姿勢による口腔通過時間に有意な差はないものの咽頭期に重大な障害が無ければ,直接的嚥下訓練も段階が進み経口摂取量の増加が予想されることから,ADLをあげるためにも60–90度の摂食時姿勢を取る方が望ましいと考えられる.

  • 松岡 真由, 中西 恭子, 渡部 啓孝
    2008 年 12 巻 2 号 p. 124-134
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    【目的】当院における過去約9年間の摂食・嚥下リハビリテーションの実施状況と回復度をまとめ有効性を分析した.急性期病院における回復に導くための有効な因子を明らかにし,今後の課題を明示することを目的とし報告する.

    【対象と方法】対象は491名の摂食・嚥下障害のある入院成人患者(男性303名,女性188名,平均年齢73.4歳)だった.耳鼻咽喉科医師と言語聴覚士がこれらの摂食・嚥下障害の臨床的病態重症度(Dysphagia Severity Scale,以下DSS)を訓練開始時と終了時に判定し,この差をDSS回復度と定めた.DSS回復度は,患者の属性,病態構音所見,訓練実施状況から分析した.栄養摂取状況についても訓練開始時と終了時に併せて評価した.この差である栄養摂取状況回復度はDSS回復度との関係を分析した.

    【結果】平均DSS回復度は1.60で,誤嚥のあるレベルは36.0%に半減した.検定結果より,性別,年齢,訓練開始時にある気管切開,および運動障害性構音障害の存在は嚥下障害の回復に関与が少ない因子だと言えた.一方,摂食・嚥下障害になった原因疾患,脳損傷部位,訓練開1三時の栄養摂取状況,誤嚥のタイプ,嚥下性肺炎既往歴認知症の存在,栄養摂取状況回復度発症から訓練開始までの日数および訓練期間は回復に関与する因子だと考えられた.

    【考察】急性期病院において有効な嚥下リハを実施するためには,嚥下性肺炎の発症防止の対応,適切な嚥下評価に基づいた食餌レベルの選定等が必要だった。訓練実施については原因疾患の病態安定前後によって内容を考慮することが必要だった.入院中に適切な訓練期間を提供すること,転院先でも継続した嚥下リハが行えるように連携することが求められた.

短報
  • 藪中 幸一, 橋本 務, 真田 茂, 友利 敦, 永来 努, 大植 睦
    2008 年 12 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    【目的】健常者を対象にUltrasonography (US) における嚥下時の舌骨動態を解析した.

    【対象と方法】対象は,健常成人で20歳代5名,30歳代5名,40歳代5名の合計15名とした.舌骨の描出方法は,被験者の姿勢を坐位とし,体動を防ぐために壁を背にして姿勢を固定した.プローブはBモード画像上で正中矢状断が描出できるように顎下部にあて,舌骨が画面の中心となるようにした.舌骨は,舌骨の後方陰影を伴った高エコー域として描出した.この状態において,5mlの飲用水を嚥下する際の舌骨動態をUSによって3秒間の撮影を行った.計測回数は,舌骨が十分に追跡可能な画像が撮影できた5回を採用した.画像解析ソフトはimage Jを用い,フレームレート30 fpsで3秒間撮影した.この動画を基に,1コマごとのずれを追跡し,安静時を基点とした舌骨の可動範囲(水平方向移動距離,垂直方向移動距離)を計測した,

    【結果】今回我々は,健常者を対象にUSによる舌骨運動を解析したが,比較的容易に舌骨を観察することができた.全ての症例において,USによる舌骨運動は,VFで見られる舌骨運動と同様の(挙上後退・挙上前進・停滞・下降後退運動)の運動が確認でき,嚥下時間と舌骨運動の軌跡を正確に計測できた.各年齢層における舌骨運動時間については,全経過時間における20歳代と30歳代及び40歳代の間には,有意差を認めた(P<0.05)が,30歳代と40歳代の間には,有意差が認められなかった (P=0.87).

    【結語】今回我々は,USにおける舌骨運動の動態画像を明らかにした.USによる舌骨運動の評価は,嚥下障害の新たな動態画像手法として臨床応用が可能と考えられる.

症例報告
  • 杉下 周平, 野﨑 園子, 馬木 良文, 椎本 久美子, 川崎 聡大
    2008 年 12 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2008/08/31
    公開日: 2021/01/22
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病の歩行障害に,音リズム訓練の有効性が報告されている。われわれは,音リズム訓練が摂食・嚥下訓練に有効であったパーキソン病患者を経験したので報告する.

    パーキンソン病患者66歳男性である.2006年に誤嚥性肺炎と診断され,嚥下機能の精査とリハビリを目的に当院転院となる.

    訓練は,舌訓練とメンデルゾーン,頚部ストレッチを主体とした訓練(間接的訓練)と音リズムを用いた訓練(音リズム訓練)を実施した.訓練は各1ヵ月とし,各訓練間には,2週間の除去期を設定した.評価はVFから定性的に誤嚥や咽頭残渣の有無を,定量的にはOral transit duration (OTD) と,Pharyngeal transit duration (PTD) を測定した.検査食はゼリーとジュースを用いた.

    定性評価では,音リズム訓練後に咽頭残渣や誤嚥の改善を認めた.定量評価の結果を,ベースライン期,間接的訓練後,除去期,音リズム訓練後の順に記す.ゼリーではOTD (sec) は3.97±0.54,4.60±1.94,2.47±0.37,0.94±0.08 (p<0.05 vs ベースライン期),PTDは,1.38±0.64,1.43±0.86,1.49±0.74,0.18±0.02 であった.ジュースでは,OTD(sec)が2.76±0.39,184±0.45,1.47±0.62,0.94±0.02 (p<0.05 vs ベースライン期),PTDは0.85±0.01,0.89±0.01,0.96±0.07,0.49±0.19であった.ゼリー,ジュースともに音リズム訓練でOTDの短縮を認めた.

    パーキンソン病のリズム形成障害は古くより指摘され,歩行訓練では,外的な刺激が歩行を安定させるとしている.本例でも,外的な音リズム刺激が,特に口腔相の随意運動を向上させたことで,安定した嚥下動作が可能になったと考えられた.

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