2009 年 13 巻 3 号 p. 237-242
【目的】本研究では,過敏の症状を呈する学童期小児を対象とし,脱感作療法の効果について症例を通して検討した.
【対象と方法】対象は,都内某普通小学校併設の特別支援学級に通学する障害を有する児3 名(児童A:8 歳6 カ月ダウン症候群男児,児童B:8 歳5 カ月脳性まひ男児,児童C:11 歳1 カ月脳性まひ女児)である.摂食指導担当の歯科医師,担当教諭,保護者が,それぞれ触感覚過敏について全身,特に顔面・口腔内を評価した.過敏の評価は,接触刺激によって拒否動作が惹起された場合を過敏と判断し,心理的拒否との鑑別を行った.脱感作療法の実施者は保護者であり,家庭にて1 日に1 回実施した.実施期間は,平成19 年2 月から平成20 年2 月までの1 年間とした.
【結果】児童A では,過敏は開始1 カ月後には軽減し,1 年後には顔面の過敏の一部が完全に脱感作された.児童B では,1 年後に過敏の部位が著明に減少し,症状も軽度となった.児童C では,1 年後にも改善がみられなかった.
【結論】1.触感覚過敏に対する脱感作療法は有効であるものの,すべての症例に効果的ではなかった.
2.摂食指導における過敏の定義づけと,症状に応じた適切な脱感作療法の確立が重要であると考えられた.