2012 年 16 巻 2 号 p. 192-197
【目的】摂食・嚥下障害スクリーニングのための質問紙の妥当性を検証するため,質問紙での評価と30 ml 水飲みテストの結果との関連につき検討する.
【対象】リハビリテーション科外来に通院中の患者310 名.男性197 名,女性113 名で年齢は25~93 歳(平均66 歳).主な疾患は脳血管障害,脳外傷,神経・筋疾患などであった.
【方法】質問紙は15 項目からなり,肺炎の既往,栄養状態,口腔・咽頭・食道機能,声門防御機構などが反映される構造で,3 段階で回答する.対象患者に対し質問紙での評価を行い,あわせて水飲みテスト(コップから30 ml の水を摂取;窪田,1982)を施行.各項目の回答と,水飲みテストのプロフィールとの関連について単変量解析をカイ二乗検定で行い,その後ロジスティック回帰分析(ステップワイズ:変数増加法)を行った.その際,質問紙については「A の回答あり」を異常とし,水飲みテストではプロフィール1, 2 を正常,3~5 を異常とした.
【結果】カイ二乗検定では,質問紙の項目のうち,咽頭機能および声門防御機構を反映する項目で有意差が認められた.口腔・食道機能を反映する項目では関連が認められなかった.ロジスティック回帰分析では,「お茶を飲むときにむせることがありますか?」「やせてきましたか?」「食事中や食後にのどがゴロゴロすることがありますか」の3 項目が有意な因子としてあげられ,それぞれのオッズ比は11.96,10.75,3.80 であった.
【考察】本質問紙には,水飲みテストの結果と高い関連性をもつ項目が認められ,それは「液体を飲む際のむせ」をチェックする項目であった.このことは,質問紙の項目に一定の妥当性があることを示していると考えられる.本質問紙を有効に活用すれば,誤嚥等のリスクを伴うことなく,30 ml の水飲みテストと同程度に摂食・嚥下障害のスクリーニングを行うことが可能であると考えられた.