2025 年 29 巻 3 号 p. 118-125
【緒言】サルコペニアと摂食嚥下障害が併存する状態はSarcopenic Dysphagia(以下SD)と呼ばれている.SD の判定フローチャートでは生体電気インピーダンス法(Bioelectrical Impedance Analysis;以下BIA 法)による骨格筋指数(Skeletal Muscle mass Index;以下SMI)の他,下腿周囲長(Calf Circumference;以下CC)を用いることも可能である.しかし,SMI とCC を用いたSD の判定率を比較した研究はない.また,我が国ではSD の判定にFood Intake LEVEL Scale(以下,FILS)が多用されるが,CC とFILS によるSDの判定への影響は不明である.従って,本研究目的は以下の2 点とした.一つは,SDの判定率にSMI とCC に差異があるかを評価し,もう一つはCC とFILS によるSD の判定への影響を評価することである.
【方法】北海道札幌市内の通所介護3 施設を利用する要支援・要介護高齢者78 名を対象とした.2023 年12 月から2025 年2 月にデータを収集した.BIA 法によるSMI 基準とAsian Working Group for Sarcopenia によるCC の基準値(以下AWGS 基準)でサルコペニアを判定し,FILS ≦ 8 点をSD と定義した.SMI 基準とAWGS 基準でサルコペニアと判定された高齢者において,SD の判定率のクロス集計より感度・特異度・κ 係数を算出した他,SD の要因に関する単変量解析の結果を比較した.
【結果】対象者78 名のうち,サルコペニアと判定された者は,SMI 基準では,51 名(65.3%),AWGS 基準では52 名(66.7%)であり,SD と判定された者は両基準共に13 名(16.7%)であった.SMI 基準とAWGS 基準におけるサルコペニア判定の感度は0.90,特異度は0.78,κ 係数は0.69 であり,SD 判定においてはκ 係数1.0 であった.
【結論】FILS を用いることで,AWGS 基準とSMI 基準において同等の妥当性でSD を検出し得る.一方で,FILS は食物形態の変更によって摂食嚥下障害を検出する.FILS はSD を見落とさないが,食物形態の変更が必要となるほど嚥下関連筋のサルコペニアが進行しなければ,SD の評価が難しい可能性がある.本指標だけでは評価が不十分な可能性があり,他のスクリーニングツールでSD と判定された者との比較も必要であると推察された.