2017 年 10 巻 p. 22-31
“Build Back Better(ビルド・バック・ベター)”が仙台防災枠組の優先行動の一つとして採択され、国内外の復興で「災害前と同じ脆弱性は再現しないこと」が求められるようになった。この言葉が最初に使われたのは2004年インド洋津波後のアチェ復興と言われているが、アチェ復興が果たして最新のビルド・バック・ベターの定義に照らして成功したといえるのか論考を試みた。復興プロセスにおける住民自治状況や経済及び人口回復といった観点から概観した結果、「社会・経済的な脆弱性」の低減は認められた。しかし、バンダ・アチェ市沿岸部4村落及び移転団地2地区の住民ヒアリング調査の結果に基づき、沿岸部及び移転団地の主に住民来歴及び定住意思を検証した結果、「物理的な脆弱性」の再現を防いだとは評価できなかった。特に、移転団地は高い災害安全性にもかかわらず沿岸部よりも定住意思が低く、津波の長周期性にも関わらず中長期的に定住化は進まないことが予想される。