日本災害復興学会論文集
Online ISSN : 2435-4147
10 巻
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一般論文
  • 吳 毓昌
    原稿種別: 一般論文
    2017 年 10 巻 p. 1-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    1999年9月21日午前1時47分﹑マグニチユ一ド7.3(M7.3)の集集大地震が台湾を襲った。この地震では、2,500人以上の犠牲者が出ただけでなく﹑多くの建物が倒壊するなど経済的にも自然生態系にも大きな損害と被害が発生した。その結果﹑集集大地震はこの100年間で台湾で最も大規模な地震災害をもたらした。防災の取り組みには﹑予測と予報に高度の先進的科学技術的側面とともに﹑災害被害軽減や防災活動を社会が受容して実践するという社会技術的側面がある。日本と台湾はともにユ— ラシアプレートとフィリピン海プレートの境界上に位置する島国であり﹑東アジアモンス— ン気候に属することから﹑地震や台風などの自然災害10)が多発する最も近接する隣国であるだけてなく﹑歴史的にも文化的にも両国は深い関係にあり﹑社会習慣や地域特性も共通性が高い。したがって﹑防災の取り組みには関しても日本と台湾の間には共通性があり﹑後者の社会技術8)としての防災活動の経験交流が重要な意義を持つと考えられる。特に、日本と台湾の災害法制度に基づく防災システムと組織運用に関する比較研究は重要である。ここでは﹑台湾における災害史と災害法制度の変遷を﹑次に台湾における災害対応組織と体制の現状と課題を論じ﹑台湾における災害対応組織と体制と日本のそれとの相違を比較検討する。これを踏まえて﹑日本の災害防救対応制度の良い点11)を参考にした﹑今後の台湾の災害対応制度と組織の在り方への提言を行うものである。
  • 福島県富岡町の「夜の森」の桜をめぐって
    佐藤 年緒
    2017 年 10 巻 p. 11-21
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    この研究は、被災地において住民が地域の誇りとしている自然や風景、文化、行事などの「地域のシンボル」を生かす復興に前向きな手がかりを与えようとするものである。東京電力福島第一原子力発電所の事故によって全町民が避難した福島県双葉郡富岡町では2017年春に「帰還宣言」を出す準備が進められているが、県内外に離散している住民がどれだけ町に戻れるか見えていない。放射線の「リスク」「安全」だけの判断でなく、住民が町を離れていても前向きに歩むための心の拠り所も必要だと推測される。富岡町が「ふるさとのシンボル」としているのが「夜の森(よのもり)の桜」である。それを生かして住民たちをつなぐことができるか。「景観と安全」の両立を図って成果をおさめた長崎の眼鏡橋保存や兵庫県城崎温泉の復興事例と比較、それらの教訓を基に、地域のシンボルを生かして世代を超えて長期に進める復興の考え方を提案する。
事例研究
  • ムラクサ郡4村落と移転団地2地区における住民ヒアリング調査結果から
    永見 光三, 北脇 秀敏, 竹谷 公男, 松丸 亮, 荒巻 俊也
    原稿種別: 事例研究
    2017 年 10 巻 p. 22-31
    発行日: 2017年
    公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー
    “Build Back Better(ビルド・バック・ベター)”が仙台防災枠組の優先行動の一つとして採択され、国内外の復興で「災害前と同じ脆弱性は再現しないこと」が求められるようになった。この言葉が最初に使われたのは2004年インド洋津波後のアチェ復興と言われているが、アチェ復興が果たして最新のビルド・バック・ベターの定義に照らして成功したといえるのか論考を試みた。復興プロセスにおける住民自治状況や経済及び人口回復といった観点から概観した結果、「社会・経済的な脆弱性」の低減は認められた。しかし、バンダ・アチェ市沿岸部4村落及び移転団地2地区の住民ヒアリング調査の結果に基づき、沿岸部及び移転団地の主に住民来歴及び定住意思を検証した結果、「物理的な脆弱性」の再現を防いだとは評価できなかった。特に、移転団地は高い災害安全性にもかかわらず沿岸部よりも定住意思が低く、津波の長周期性にも関わらず中長期的に定住化は進まないことが予想される。
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