日本透析医学会雑誌
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症例報告
腎移植後の透析再導入例にイコデキストリン腹膜透析液を使用し移植残腎機能温存とQOL改善を認めた1症例
木村 将貴吉田 一成藤田 哲夫石井 大輔大草 洋須藤 利雄西 盛宏平山 貴博土田 繭美南田 諭池田 勝臣羽村 素子竹内 康雄兵藤 透鎌田 貢壽馬場 志郎
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2007 年 40 巻 2 号 p. 195-201

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抄録
CAPD (continuous ambulatory peritoneal dialysis) にイコデキストリン透析液を使用することにより, 残腎機能が温存されるとの報告がなされている. 今回, われわれは移植残腎機能低下による腹膜透析への再導入にあたり, イコデキストリン透析液を使用して体液管理をすることにより, 移植残腎機能を保持し, さらにはQOLの改善を得た症例を経験したので報告する. 症例は70歳, 女性. 1999年に原疾患不明の慢性腎不全にて血液透析導入となり, 2001年に屍体腎移植術を施行した. その後, 徐々に移植腎機能低下を認め, 2004年6月からCAPD導入となった. 同年8月から, 夜間の腹膜透析を1.5%ブドウ糖透析液からイコデキストリン透析液に変更したところ, 1日尿量が平均542.9±248.6mL/日であったのに対し, ICO導入後から2005年6月までの1日尿量は平均1,033.0±340.5mLに増加し, それに伴う飲水量の増加も認めた. またイコデキストリン導入後より下腿浮腫の改善を認め, その後の体重は増加し標準体重に徐々に近づいてきている. 体液量に関しては, hANP (human atrial natriuretic peptide) が平均110.2±28.7pg/mLから平均36.2±6.9pg/mL, 心胸郭比が50.8%から44.7%と各々減少し, 体液量貯留が是正されていた. 移植残腎機能に関しては, イコデキストリン透析液導入後の平均s-Cr値, eGFR値 (estimated glomerular filtration rate) は安定しており, 悪化傾向を認めていない. 加えて, イコデキストリン導入後は総コレステロール値と中性脂肪値の低下を認めており, 脂質代謝は改善されていた. QOLに関しては, SF-36 (short form 36) を用いた結果によると, イコデキストリン導入前後で明らかな改善を認めている.
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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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