2010 年 43 巻 2 号 p. 221-224
近年,高齢者の透析導入や長期透析患者の増加によりADL低下のみられる維持透析患者が増加している.今回ADL低下の原因として潜在的副腎皮質機能低下症が考えられた症例を経験したので報告する.症例1:63歳,男性.糖尿病を原疾患として1997年透析導入.2006年10月腸閉塞で入院し絶食により軽快した.退院後も食欲低下,全身倦怠感が持続,ACTH 211 pg/mL(7.4~55.7),cortisol(C)9.1 μg/dL(4.0~18.3)でありCの相対的低下と考えられた.症例2:79歳,女性.原疾患不明で2002年透析導入.2007年6月肺炎で入院,抗生剤投与により軽快したがその後より食欲低下が持続した.ACTH 103.0 pg/mL,C 17.2 μg/dLでありCの相対的低下と考えられた.透析患者ではAddison病でみられるNa喪失や脱水が認められず診断に苦慮する場合も多いと考えられる.今回の症例もNaの低下はみられずハイドロコルチゾンの補充により全例急速な回復がみられた.ADL低下例については潜在的副腎皮質機能低下症も念頭において診療にあたる必要性が考えられた.