抄録
近年インクレチンを介した糖尿病治療薬のうちdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)阻害薬が出現し,糖尿病治療にパラダイムシフトをもたらしている.透析患者の糖尿病治療においても,このDPP- 4阻害薬の中で腎不全患者にも使用可能なビルダグリプチンの使用が可能となって以来,選択肢が広がっている.【目的・方法】血糖管理が不十分な2型糖尿病合併維持血液透析患者42名に対し,ビルダグリプチンを既存治療薬に追加投与した群(V群:16名)と対照群(C群:26名)に分け,投与1か月前後のHbA1c,グリコアルブミン(GA),透析前血糖値について比較検討した.また透析患者1名に対し持続血糖モニター(CGM)を使用し,24時間の平均血糖値(AGV),血糖変動幅(SD)を測定した.【結果】HbA1cはビルダグリプチン投与前6.5±1.1%から投与後5.6±1.1%に,透析前血糖値は投与前184±79 mg/dLから投与後135±50 mg/dLに,1か月間でそれぞれ低下した(p<0.05).GAは投与前25.1±5.3%から投与後22.9±4.4%と低下傾向を示した(p=0.16).HbA1c,GA,透析前血糖値は,V群でのみC群に比し有意に改善していた(p<0.05).CGMの1例では,AGV,SDいずれも,投与前日と比較し,投与日,投与後30日と短期間でいずれも低血糖を認めずに改善を示した.【結語】ビルダグリプチンは,HbA1c,GA,透析前血糖値を下げ,さらには24時間の平均血糖値および血糖変動幅を改善した.