日本透析医学会雑誌
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原著
糖尿病血液透析患者におけるアログリプチンの有効性と安全性の検討
藤井 由季阿部 雅紀樋口 輝美鈴木 紘子松本 史郎水野 真理菊池 史岡田 一義相馬 正義
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2013 年 46 巻 7 号 p. 633-640

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抄録

糖尿病血液透析患者におけるDPP-4阻害薬アログリプチンの有効性と安全性について検討した.HbA1c(NGSP)値>6.9%またはグリコアルブミン(GA)値>20.0%で,食事・運動療法またはDPP-4阻害薬以外の経口血糖降下薬にて治療中の2型糖尿病血液透析患者28例(男性22例,女性6例,平均年齢69.9±9.5歳,平均透析歴55.0±51.0か月)を対象とした.インスリン治療中の患者は除外した.既存の糖尿病治療は,ミチグリニド15 mg/日が3例,30 mg/日が1例,α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)が10例,食事・運動療法のみが14例であった.これら28例に対してアログリプチン6.25 mgを1日1回投与とし,透析開始前の食後随時血糖値(PPG),HbA1c,GA値の推移を24週間観察した.PPG,GA値はアログリプチン投与4週目より,HbA1c値は8週目より有意な低下を認め,効果は24週目まで持続した.アログリプチン投与前が食事・運動療法のみで治療されていた14例を単独群とし,すでにミチグリニドまたはα-GIによる治療を受けていた14例を併用群とし,サブグループ解析を行った.HbA1cのベースラインからの変化率は2群間で有意な差は認められなかったが,PPGとGAの変化率は単独群で有意に大きかった.また,中性脂肪と透析間体重増加には有意な低下が認められた.観察期間中,低血糖などの有害事象は認められなかった.アログリプチンは糖尿病透析患者の血糖コントロールに有効であった.特に,薬物未治療例には効果が期待できると考えられた.長期的な有効性,安全性については今後のさらなる検討が必要である.

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© 2013 一般社団法人 日本透析医学会
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