2022 年 55 巻 1 号 p. 35-40
48歳男性.慢性腎不全で維持透析中.2021年4月に突然の疼痛を伴うシャント閉塞をきたしたため緊急VAIVTを施行.吻合部から肘部までの広範囲の血栓に対して血栓溶解を施行.造影で明らかな狭窄を認めず,残存血栓もない状態で終了した.同日の血液透析中に血栓性閉塞を再発した.翌々日にVAIVTを施行し,残存血栓や狭窄がないことを確認し,その後抗凝固剤ヘパリンを増量して透析を行うも回路内凝固をきたしたため入院となり同日中に閉塞した.入院時に明らかな呼吸器症状はなかったが肺炎像を認め,SARS‒CoV‒2を検出したため中等症COVID‒19と診断した.異常な血栓形成を伴うCOVID‒19症例では呼吸器症状が伴わない症例が散見される.明らかな狭窄のない血栓性シャント閉塞をきたした症例においてはCOVID‒19も鑑別疾患の一つとなりうると思われた.